伊川茂樹

生まれつき重い脳性麻痺で体が不自由な伊川茂樹さんは、複数の大学や専門学校で福祉や電子工学、無線技術などを学びました。

バリアフリー音楽

伊川茂樹

伊川茂樹さんがバリアフリー音楽を始めたのも、自身のように言葉が不自由な人でも明瞭に言葉を話せるようなシステムを作ろうとしている中で、音を聞こえやすくするシステムが揃えば、多くの障害者に役立つと考えたからで、2010年8月18、19日の2日間、東京国際フォーラムのおいて、作曲家三枝成彰さんが進行役を務めている「はじめてのクラシック」という演奏会にディレクターとして参加しました。

恐らく日本初のバリアフリー音楽の試みだったようで、耳がほとんど聞こえないお婆ちゃんが「よく聞こえるよ」と言って喜んでくれました。

伊川茂樹さんと三枝成彰さん

もともと伊川さんは「バリアフリー音楽」として難聴者が音を聞き取りやすくなる研究を続けていて、福祉施設などでバリアフリーを取り入れたピアノ演奏会などを実施しており、この取り組みを知った三枝さんが関心を示したことによって、今回の演奏会が実現。

システム

実は全く音が聞こえない人は少なく、人間は耳だけではなく、音の振動によって体でも音を感じており、2つの処理を行うことによって音が随分と聞こえやすくなるそうです。

仕組み

突発性難聴などの病気や加齢に伴う難聴は高音が聞こえにくいとされ、あらかじめ演奏曲の高音部分を割り出し、聞こえにくい音を音響機器で強調する方法で改善し、さらに2つのスピーカーで異なる周波数を出すことによって、スピーカー間の空気中に発生する重低音によるかすかな振動を利用するのだそうです。

国際フォーラム
東京国際フォーラム

東京国際フォーラムの会場にある約5000席のうち、50席分をバリアフリー化。
座席の下には6大のスピーカーを配置、ピアノの近くには反射板を備え付け、健聴者には違和感のないような音域を作り出すことが腕の見せ所だという。

バリアフリーは生きるためだけでなく、芸術を楽しむものであってもいいはず。もっと世に広まる機会になれば。

国内有数の大ホールで難聴に配慮して演奏会が開かれるというのは異例なのだそうです。

はじめてのクラシック

これまでクラシック音楽にあまり接する機会がなかった若い人たちに、その楽しさと上質さを広く伝えたいという思いからはじまった音楽演奏会。

2007年に1回目が行われ、大成功をおさめた画期的なコンサートで、入場料も通常より低く設定、曲間に三枝氏による解説が行われるなど、クラシック初心者からファンまで、誰もが楽しめる内容となっている。

座右の銘

伊川茂樹さんの座右の銘「媚びない、退かない、諦めない」。
伊川さんにとって発明や開発の喜びは誰も知らない、誰もやったことがない事実を発見できることで、例えどんな困難な問題が起きようとも後に退かず、途中で諦めたら何もできないと確信しています。

プロフィール

夢はFMコミュニティ放送局

伊川さんは聴覚分野だけでなく、視覚分野でもユニークなことをなさっており 「高齢者用のバリアフリーアート展」を開催されました。

誰でも年を取ると色の見え方が違ってくるので、コンピューターを通すと 高齢者が若い時に見たのと同じ鮮やかな色を見ることができるパターンを作り、今後の発明や開発の他に、伊川さんには大きな夢があり、それはFMコミュニティ放送局を立ち上げること。

それも公共放送のミニチュア版ではなく、全く違った発想の放送局で、そのため、伊川さんはコミュニティ放送の免許資格である第二級陸上無線技術士という無線従事者免許証を持っています。

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